年末が近づく11月、マーケットは10月の延長線上。売れ行きは昨年より控えめで、在庫はたっぷり。数字は静かでも、動き方しだいで“いい買い物・いい売り方”は十分に狙えます。
スナップショット
販売:11月の住宅販売は1,846件(前年比-15.4%)。10年平均比-20.6%で、落ち着いたペースが続きました。
新規登録:3,674件(前年比-1.4%)だが、10年平均比+3.1%。
総在庫:15,149件(前年比+14.4%/10年平均比+36.3%)で“選べる”状況。
売れ行き/在庫比(SAR):12.6%(戸建て9.7%/タウンホーム13.6%/コンド14.8%)。“12%以下が続くと下押し、20%超が続くと上昇”という歴史的な傾向に照らすと、小幅な軟化圧力の範囲です。
GVRチーフエコノミストの見立て:“買い手は慎重、在庫は健全水準。価格は多くのセグメントでわずかに軟化”。金利が当面横ばいなら、需要を押し上げるのは“マインドの変化”になる、というコメントも。
価格の“現在地”と温度差(HPI)
総合HPI:$1,123,700(前年比-3.9%/前月比-0.3%)
戸建て:販売541件(-13.6%)、HPI $1,900,600(前年比-4.3%/前月比-0.4%)
コンド:販売945件(-13.2%)、HPI $714,300(前年比-5.2%/前月比-0.2%)
タウンホーム:販売350件(-22.4%)、HPI $1,065,600(前年比-4.4%/前月比+0.1%)
いずれも“じわり軟化”の圏内。ただし、コンドは建物ごとの差(管理の質、修繕積立、築年、駅距離など)が結果を左右しやすく、平均値での読みは難しい局面です。
エリア早読み:数字の裏側にあるストーリー
トライシティーズ
ポートコキットラム(総合HPI):+0.6% MoM。駅や幹線へのアクセスが良く、“生活導線の良さ”が効いて底堅い。
コキットラム(総合HPI):-0.1% MoM。小幅な変動で、物件単位の見極め勝負。
ポートムーディ(総合HPI):+0.3% MoM。スカイトレインと自然アクセスの“二兎取り”が引き続き評価。
バンクーバー西側(総合HPI):-0.3% MoM。高価格帯は在庫の厚みと選別色が継続。学区・街区の違いがそのまま価格に反映されるため、マイクロ比較が必須。
ノースショア
ノースバンクーバー(総合HPI)は±0.0% MoMで横ばい。エリア内でも築浅×利便の組み合わせで表情が変わりやすい印象。動きが出たところ(セグメント別)
タウンホームはリッチモンド+2.0% MoM、バンクーバー東+1.4% MoM、ポートコキットラム+1.0% MoMなど点の強さも確認できました。コンドはノースバンクーバー+1.1% MoM、サンシャインコースト+2.4% MoM、ウェストバンクーバー+4.3% MoMと、ローカルに明るい動きも。いずれも3カ月・6カ月スパンではまだ調整基調が多く、短期の上振れ=反転確定とまでは言い切れません。
補足:5年トレンドのチャートを見ると、2022年ピーク後の調整→2024–25年の横ばい気味の推移が視覚的にもわかりやすいです。“過熱でも急落でもない”のが足元の空気感。
いま何をする?— 実戦ガイド
買い手:“選べる今”を活かす設計
資金の“現実”から:最新の事前審査で月々の支払い許容を明確化。
3〜5件の並走:候補は必ず複数。総保有コスト表(ローン・税金・保険・光熱・ストラタ費・維持修繕)で“同じフォーマット”比較。
交渉の強みは“代替案の確度”:Plan B/Cを握っていると、価格だけでなく条件(引渡し時期、軽微修繕、クリーニング、付帯物)まで落ち着いて交渉できます。「この家がダメでも次がある」という余裕が、より良い着地に直結。
売り手:“最初の3週間”と“安心の見える化”
ローンチ価格が命:反響が2〜3週間で鈍ければ小幅調整で鮮度維持。
不安の先回り:点検報告、修繕履歴、月次コスト、ストラタの改善履歴などリスク低減情報を先出し。買い手の疑問を“聞かれる前に潰す”ことで主導権を取り戻せます。
見せ方は武器:プロ写真、丁寧なフロアプラン、内覧動線の工夫でクリック率・予約率が上がります。P.8今は売上(Sales)より在庫(Listings)が勝りやすいので、選ばれるための一手が重要です。
投資家:NOIで評価、小さく積み上げる
表面ではなく実質:賃料、現実的な空室、運営費・ストラタ費を織り込んだNOI(ネット利回り)で比較。
小さなバリューアップ:軽微リノベ、収納・駐車の最適化、募集条件や管理の見直しで実効利回りを上げる。
出口から逆算:在庫厚めの今は、流動性の高い間取り×立地を優先。将来の売却しやすさが成績を左右します。
まとめ:静かな数字=戦略が効くタイミング
11月の市場は、販売は控えめ/在庫は厚め/価格は小幅に軟化。ドラマは少なくても、準備と比較の精度がそのまま成果に反映される“実力が出る”相場です。
買い手は複数候補を走らせ、冷静な余裕で条件交渉へ。売り手は最初の価格×安心の見える化×第一印象で“選ばれる理由”を提示。投資家はNOI思考で一つずつ価値を積み上げる。
ヘッドラインに振り回されず、自分のゴールに沿った“次の一手”を静かに積み重ねる——2025年の締めくくりは、そんな戦い方がいちばん強いはずです。
※出典:Greater Vancouver REALTORS®「GVR Residential Market Report – November 2025」。文中の販売件数・在庫・HPI・SAR・各エリア/セグメントの月間変化、ならびに本文の引用要旨は同レポート掲載の数値・記述に基づきます。