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2025年10月のメトロバンクーバー住宅市場:買い手に追い風、売り手は戦略で差がつく

2025年10月のメトロバンクーバー住宅市場:買い手に追い風、売り手は戦略で差がつく

10月のメトロバンクーバーは、販売は低調・在庫は豊富という組み合わせが続きました。数字を見ながら、「いまの市場でどう動けば成果につながるか」を、買い手・売り手・投資家それぞれの視点で読み解きます。


掴みたい3つのポイント

1)販売は昨年より静か——秋の最盛期でも戻りは限定的。
10月の住宅販売は2,255件で、前年同月比-14.3%。本来なら秋はもうひと山くる時期ですが、10年の季節平均比でも-14.5%と、動きは抑え気味でした。金利は年内に何度か引き下げが入りましたが、買い手の心理は「様子見」から一気に「攻め」へとは振れていません。

2)在庫は過去水準と比べても“厚い”——選択肢が広がる状況。
新規登録は5,438件(前年同月比-0.3%)と横ばいながら、10年平均比+16.3%。市場に出ている総在庫は16,393件で前年+13.2%/10年平均比+35.9%まで増えています。買い手にとっては「比較検討の幅が広い」局面です。

3)体感は“落ち着いた均衡”——価格はじわり軟化。
売れ行き/在庫比(Sales-to-Active Ratio=SAR)は14.2%。一般に12%を下回る状態が続くと価格に下押し圧力、20%を超える状態が続くと上昇圧力がかかりやすいと言われます。タイプ別では戸建て11.3%/タウンホーム17.6%/コンド15.5%。過熱でも停滞でもない“中庸”に近く、交渉がしやすい空気感が続いています。


価格の現在地:緩やかな調整、セグメント差はじわり

  • 総合HPIは$1,132,500(前年比-3.4%/前月比-0.8%)。

  • 戸建ては販売693件(-4.3%)、HPI $1,916,400(前年比-4.3%/前月比-0.9%)

  • コンドは販売1,071件(-23.1%)、HPI $718,900(前年比-5.1%/前月比-1.4%)

  • タウンホームは販売477件(-4.8%)、HPI $1,066,700(前年比-3.8%/前月比-0.3%)

金利低下のニュースがあっても、需要が一斉に戻るまでには至っていないため、価格は“ゆっくりと軟化の範囲内にとどまっています。とくにコンドは建物ごとの差(管理・積立金・駅距離・築年)が価格形成に強く影響する局面で、平均値だけでは読みづらいのが実感です。


エリア早読み:数字の裏にある“街の事情”

トライシティーズ(Coquitlam・Port Coquitlam・Port Moody)

  • ポートムーディ(総合HPI)は前月比+0.6%。急伸ではありませんが、駅近の利便性と自然環境を両立できる点が依然強み。築浅や管理の良いストックほど、価格の下支えが働きやすい印象です。

  • コキットラム(総合HPI)は前月比-0.5%。ただしコンドHPIの動きは小幅で、建物ごとの管理状況・積立水準・交通利便(SkyTrain等)によって評価が分かれます。同じ市内でも“物件単位”で結論が変わるため、平均値より個票の確かさが大切です。

バンクーバー・ウエスト(総合HPI 前月比-1.1%)
高価格帯では在庫の厚み×買い手の選別が続き、強含み材料が出ても一気に反転しにくい地合い。学校区や街区の違いが価格にきめ細かく反映されるため、狭いエリアでの比較が欠かせません。

スクアミッシュ
総合は小幅プラス(+0.2%)、タウンホームは+1.6%など、相対的な取得コストの魅力と生活志向の移動が底堅さに寄与。通勤・リモート比率、ライフスタイルの適合度で「このエリアを選ぶ理由が明確な層」の需要が継続しています。


いま何をする?タイプ別アクションガイド

買い手(ファースト/住み替え)

選択肢が多く、交渉余地も生まれやすいのが現在の魅力です。まずは最新の事前審査で購入可能額と毎月のキャッシュフローを確定。候補を3〜5件に絞り、総保有コスト(ローン・税金・保険・光熱・ストラタ費・修繕)を同一フォーマットで比較します。
交渉で「総合点で有利を取れる」のは、代替案(比較物件)の確度が高いときです。第2・第3候補の現実的な選択肢を持っていると、価格だけでなく引渡し時期や軽微修繕、クリーニング、付帯物
などの条件交渉に落ち着いて臨めます。“この物件がダメでも他がある”という心理的余裕が、結果的に好条件の獲得につながります。

売り手

在庫が厚い局面では、最初の価格設定が勝負です。公開後2〜3週間で反響が弱ければ、素早い微調整で“鮮度”を保つことが重要。また、安心材料の見える化(点検報告・修繕履歴・月次の運転コスト・ストラタの改善履歴など)は、買い手の不安を事前に解消し、交渉の主導権を取り戻す武器になります。見せ方も侮れません。プロの写真やフロアプラン、内覧導線の設計は、クリック率や内覧予約率に直結します。

投資家

いまはNOI(ネット利回り)で選ぶ局面です。家賃水準・空室想定・運営費・ストラタ費を織り込んだうえで、保守的に見積もっても“残る”物件を選定。足元の在庫厚め環境では、小さなバリューアップ(軽微リノベ・収納/駐車最適化・募集条件の見直し)が効きやすく、実効利回りの底上げが現実的です。将来の売却も見据え、流動性の高い間取り・ロケーションを優先しましょう。


まとめ:静かな数字のなかで、静かにチャンスが広がる

10月の市場は、販売の鈍さ在庫の厚みが並走し、価格はじわり軟化。派手なニュースは少ない一方で、準備と比較の精度がそのまま成果につながる“戦略が効く”タイミングです。
買い手は、複数候補を走らせて条件を比べ、心理的余裕を持って交渉に入ること。売り手は、初期価格と安心材料の見える化、そして第一印象の最大化で選ばれる理由を明確に。投資家は、NOIで冷静に選び、軽やかに価値を積み上げる工夫を。
数字に一喜一憂するより、
“自分の目的にとって良い一手”を静かに積み上げる——その姿勢が、いまのメトロバンクーバーでは最もリターンに近い道筋です。

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