在庫は高止まり、価格はじわり軟化。夏の終わりに売買はやや復調の兆し――そんな6カ月でした。
在庫は増加が続く:4月〜9月の各月で、主要3セグメント(戸建て・コンド・タウンホーム)の「総在庫」はいずれも前年比プラス。たとえば4月の総在庫は戸建て+22%、コンド+28%、タウンホーム+33%でした。
価格は小幅な下落トレンド:地域合成HPIは、戸建てで4月$2,021,800→9月$1,933,100、コンドで4月$762,800→9月$728,800、タウンホームで4月$1,102,300→9月$1,069,800。いずれもゆるやかに軟化。
売買活動は“低空飛行→持ち直し”:春は前年割れが続いたが、夏の終わりから前年同月比プラスに転じる月も(例:8–9月、戸建ては+13%・+7%)。ただし勢いは控えめ。
市場の全体像:需要は落ち着き、供給は厚め
在庫増は一貫。たとえば5月時点で戸建て在庫+24%、コンド+19%、タウンホーム+28%(いずれも前年比)。夏以降も前年を上回る水準で推移しました。
日数の伸び:平均DOM(市場滞在日数)は前年より長く、4月以降ずっと二桁の伸び。9月の戸建てDOMは前年比+20.5%。内見から成約までのリードタイムは“やや長め”が常態化。
売れ行きの体感:販売件数は春に落ち込み(例:4月、戸建て-29%、コンド-20%、TH-22%)、その後は横ばい〜小幅改善。8〜9月には戸建て・コンドが前年超えに転じました(戸建て+13%/+7%、コンド-5%/+2%)。
価格(HPI)の軌跡(地域合成)
戸建て:4月$2,021,800 → 5月$1,997,400 → 6月$1,994,500 → 7月$1,974,400 → 8月$1,950,300 → 9月$1,933,100。なだらかな下り坂。
コンド:4月$762,800 → 9月$728,800(途中の月もほぼ階段状に下落)。
タウンホーム:5月に$1,106,800で小さく反発後、9月$1,069,800へ。ピークアウト感が続く。
需給バランスの空気感(Sales-to-Active Ratio)
4月→9月の売れ行き/在庫比率は、戸建てが9〜10%台前半、コンドが13〜16%前後、タウンホームが13〜19%台で推移。過熱感は薄く、**“落ち着いた選べる市場”**が続きました。
セグメント別の読み方
戸建て(Detached)
在庫は厚い、価格は緩やかに調整。4月→9月でHPIは約$89,000下落。交渉余地が出やすく、適正価格の見極めがより重要に。
売買件数は夏に復調:8–9月は前年超え(+13%、+7%)。ただし在庫の積み増しが続くため、買い手優位の場面は残ります。
コンド(Apartment)
価格は段階的にソフト化(4月$762.8k→9月$728.8k)。一方、9月の販売は**前年比+1.5%**で持ち直しの芽も。ロケーション・管理・月々コストの“総合点”で選別色が強め。
タウンホーム(Townhome)
中間所得層の本命だが、価格は5月ピーク後にじり安(9月$1,069,800)。売れ行きは月により凹凸(6–8月は前年比プラス、9月は-12%)。間取り・駐車・管理規約が成約の決め手になりやすい。
エリア別の“明暗”
強い:スクアミッシュ(Squamish)
戸建てHPIの前年比は、4月+9.0%、5月+9.3%、6月+8.2%、7月+11.2%、8月+12.4%、9月+9.0%と一貫してプラス。移住・アウトドア志向×相対的な取得コストが追い風。弱含み:バンクーバーウェスト・リッチモンド・ウェストバンクーバー
9月の戸建てHPI前年比は、Vancouver West -6.9%、Richmond -5.7%、West Vancouver -6.3%。高価格帯の調整圧力が続く。コンドは“まちまち”
コキットラムのコンドHPIは月ごとに小幅な上下があり(例:4月+0.1%、7月+0.2%、8月+1.0%)、物件ごとの条件や立地など“個別要因”の見極めが重要です。
いま、生活者はどう動く?(買い手・売り手・投資家)
買い手
“選べる今”を活かす:在庫厚め&リードタイム長め。候補を複数走らせ、比較検討→絞り込みのプロセスに時間を配分。
月々の支払い軸で判断:価格だけでなく金利・税金・共益費・修繕積立など総保有コストを可視化して“無理のない一点”を。
売り手
初期価格が勝負:買い手主導の空気感では出だしの適正価格が最重要。2〜3週間で反響が鈍ければ微調整を前提に。
安心材料を前面に:点検報告、修繕履歴、月々コスト、管理の良さを“見える化”。選ばれる理由を明確に。
投資家
ネット利回り重視:家賃、空室、運営費を織り込んだNOIベースで比較。
バリューアップ余地:軽微リノベや運営改善(ペット可、駐車・収納の最適化など)でNOI底上げできる物件に妙味。
流動性の目線:在庫多めのうちは**出口戦略(売却しやすさ)**も同時にチェック。
月次ダイジェスト(2025年4月→9月)
4月:在庫大幅増(Det+22%/Condo+28%/TH+33%)。売買は前年割れ。HPIは横ばい〜微減の入り口。
5月:在庫増続く。売買は前年割れだが、タウンホームHPIが月間ピーク($1,106,800)。
6月:セグメント別の温度差が拡大。タウンホームの売れ行きは**前年比+8%**で健闘。
7月:全体の空気感は横ばい。価格は小幅続落。
8月:戸建ての販売が**前年比+12.7%**で持ち直し。価格はなお軟化。
9月:戸建て・コンドの販売が前年超えに。HPIは3セグメントとも前年比マイナスを継続。
まとめ:ゆるやかな調整局面で、“整えて、選ぶ”
2025年春〜初秋のメトロ・バンクーバーは、在庫厚め/価格じわり軟化/売買ペースは慎重というバランスが続きました。ここから年末にかけても、急反転より足元を固めるマーケットになりそうです。
「今すぐ買う/売る」だけが選択肢ではありません。資金計画の見直し・優先順位の明確化・相場観のアップデート――まずはここから。一緒に“勝ち筋”を設計しましょう。
出典:Real Estate Board of Greater Vancouver「REALTOR® Report(2025年4–9月、Metro Vancouver)」の各月次データをもとに筆者作成。数値は各PDFの「Activity Snapshot」「HPI」「Neighbourhood」等の掲載値(前年比・HPI・在庫・販売・DOM・Sales-to-Active Ratio)に準拠。
※本記事は情報提供を目的とした一般的な解説です。実際のご判断は個別事情や最新データに基づき、専門家へご相談ください。